時は延宝、江戸の吉原。

暑い夏を迎えた吉原遊廓では、八朔が行われていた。 八朔とは毎年八月一日だけ、花魁をはじめ遊女たちが白無垢で客をもてなす日。 それはまるで花嫁であるかのような、儚く短い刻。 その夜、空き家の駒屋にて清水屋の遊女・やえの遺体が発見された。 目撃者によると、女の悲鳴が聞こえた直後に色打掛を纏った怪しい女が出ていったそう。 この夜、遊女は全員白無垢のはず。 しきたりを無視して色打掛を着ていた者は、清水屋の花魁四名だけであった。 容疑のかかる花魁たち。 はたしてこの中の誰がやえを葬ったのか。 女同士の静かな争いが始まろうとしていた…。