この織魂岳(しきたまだけ)には何かがある。 昔、あの人は言っていた。 視界を奪うほどの雪の中、ただその懐かしい声を思い出していた。 徐々に感覚を失う手足。 息をするのも辛い豪風。 何かにすがらなければ、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。 ここは織魂岳――魔が巣食う山。