超常現象「フォルシファイ」により、強制的に記憶が改変されるらしい――そんな馬鹿げた噂は、調べるほどに確かに存在し、調べるほどに不可避であることが判明したので、人々はその現象をついには認め、受け入れて生活することにした。噂は常識となったのである。  
友人との何気ない会話が妙にかみ合わないとしたら、それはきっとフォルシファイのせいなのだ。  舞台は四人の名探偵の集う屋敷。  殺人事件の謎を追う「探偵」は、逃れられぬ惑いを抱いていた。  犯人は今、自分が犯人であることを覚えているのか、いないのか。  
私は「探偵」であり、犯人ではない……はずだ。