――目が覚めると、僕たちは小学生で、旅館の一室にいた。  覚えている。これは5年生の冬、スキー教室の初日の夜だ。  僕たちはこうして先生の目を盗み、明日の自由行動の計画を練っていた。  だけど僕たちは知っている。  この中の一人は、大人になれなかった事を。  

それが誰だったのかは、どうしても思い出せない――  

マーダーミステリー『銀嶺モラトリアム』。  これは誰にでも訪れる、少年時代最後の夜の物語。