M市市立彼岸花高等学校。 夏休みを目前に控え、浮足立った空気がクラスを包む夏の日。 教室には昼休みの高校特有の、ヒステリックとさえ言える喧騒が響きわたっている。 横に立つ友人が何を言っているのか聞き取るのにも苦労する、 そんないつも通りの休み時間が過ぎていく。 だが、その日の教室はいつもにも増して、 騒がしい様子を呈していた。 クラスで一番の変わり者と名高いオカルト部と、 クラスで一番の優等生と名高い化学部が終わりのない議論を繰り広げているのだ。 なんでも、最近生徒の間で話題になっているユウレイ屋敷の噂を オカルト部がしていたところを、 化学部が「お化けだなんて非科学的なもの存在するはずがない」と馬鹿にしたのが発端らしかった。 どちらも一歩も退かない、平行線の言い合いが延々と続く。 要領の得ないやりとりに外野がウンザリしてきた頃、 黙って2人の様子を見ていた演劇部が口を開いた。

「そんなに気になるなら、実際に行ってみたら?」

思いがけない彼女の提案に、 話を聞いていた茶道部、文芸部、美術部も加わって。 かくして6人はユウレイ屋敷へ肝試しに行く事となった。