遺言状

我が遺産、つまり安田家の家督及び安田製糸の経営権は、次の条件の元に相続されるものとする。 一つ、我が遺産は、一名が全てを相続するものとする。 一つ、我が遺産は、遺言状が公開された翌日の正午に相続されるものとする。 一つ、相続権は、本家安田家に籍のある者、分家安田家に籍のある者、我が血を引く者が持つものとする。 一つ、相続の優先順位は、本家安田家の者の年長順、分家安田家の者の年長順、最後にその他の者の年長順、とする。 一つ、次男兵二にあっては、相続までに安田家に帰還した場合のみ、相続の権利の有無の対象となるものとする。 一つ、遺言状の公開後から相続の時までの間に死亡、もしくは刑に服役することが決定した者は、相続権を喪失するものとし、他の方法での相続権の放棄は不可とする。 一つ、遺言状の公開から相続までの間、相続の権利者の内誰も権利を喪失しない場合、全員が相続権を失うものとする。 一つ、相続がなされなかった場合、安田家は断絶、安田製糸は国に売却し国営化するものとする。                            

安田 善蔵