「――見えてきました。あれが皆様のお過ごしになられる、”笛吹郷”です」
鬱蒼とした木々の生い茂る初夏の山道を車に揺られること数時間。 久方ぶりの運転手の言葉に視線を窓の外へ向けると、 谷を挟んで左右に広がるリゾート地の一帯が視界に飛び込んできた。 ―――N県北東部の山中奥深くに位置する建設中のリゾート、笛吹郷。 オープンを数ヶ月後に控えた話題のその場所を特別に貸し切り、 新入生の親睦会を兼ねて4泊5日の滞在をすることとなった、 M大学旅行サークルのメンバー九人。
彼らはまだ、これから自分達の身に降りかかる惨劇を、知る由もない―――