烏哭村という九州北部の山間に囲まれたこの村は、文明から隔絶され、独自の古き因習と伝統が今なお残されている。
『烏哭はキアラ様という神が住まう地…』
『嫉妬深きキアラ様は背信を赦さず…』
そんな辺境の村では年に一度の降霊祭が催され 、大神一族が取り仕切り、一族の巫女である双子姉妹は村人達の信仰の対象となっていた。   五年前、夏の終わり。サルビアが首をたれる頃。降霊祭を最後に、大神姉妹の姉である“那由”は謎の失踪を遂げた。
那由の妹をはじめとする幼馴染である子供達にとっては、あまりにも大きな喪失。不可解。理不尽。大人達は口 を揃えて『キアラ様の祟り』だと言い放った。
時が流れ 、様々な苦悩や思惑を抱えながら、大人になったある日に、“伊織”は仲間達を集めて、その重い口を開いた。
─────なぁ 、那由を呼ばないか?